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「市場原理に基づく自由な市場」「透明で公正な市場」「国際的で先端的な市場」の整備を目指しての「日本版ビッグバン構想」一九九六年十一月)によって金融自由化が一段と加速されることになりました。
規制緩和の急進展によって先鋭化することになった日米保険協議の主要な争点は、次の通りでした。
第一に、生命保険と損害保険の性格を併せ持つ、病気やけがを対象にした傷害保険、医療保険、がん保険など第三分野の保険への大手保険会社の本格的な参入時期の規制を、米国側は消費者から見た保険産業の課題と展望三分野の保険を得意とする米国系保険会社の利益擁護のために要求し、日本側は早期自由化を求めました。
第二に、自動車保険の通信販売と地域別・年齢別・性別による保険料率、保険価格を自由化するよう、強力な自動車保険の販売チャネルである損害保険代理店網を日本国内に持たない米国側は主張し、日本側は地域別・性別の保険料率設定に反対しました。
第三に、日本国内における火災保険の営業基盤の脆弱さを補うための有力な手段にしうる火災保険料率の自由化枠の拡大を、米国側が要請したのに対し、日本側は自由化の段階的実施を主張しました。
日米保険協議では、両国とも規制緩和と規制存続の相反する二つの論理を使い分けて、自国の保険業界の利益を擁護することに非常に熱心でした。
しかし、両国とも、消費者の利益の向上を第一に考えているようには見えませんでした。
同日本版ビッグバンと消費者利益ビッグバンは、元来、Gが提唱した宇宙創世の大爆発を意味する言葉でした。
一九八六年にイギリスで実施された金融自由化政策の一つで、ビッグバンと呼ばれた証券市場の改革にならって、日本でも金融システム改革をビッグバンというようになりました。
ビッグバン構想が発表された直後の日米保険協議の決着、九七年四月二十五日の大蔵省による日産生命保険相互会社に対する業務停止命令など、ビッグバンは、保険の分野においても急展開を示すことになりました。
保険会社の経営破綻は、事実上、第二次世界大戦後初めてのことで、生命保険の「安全神話」「不倒神話」が崩壊しました。
政府は、ビッグバン推進のために、九七年三月の閣議で、九五年三月に閣議決定した規制緩和推進計画を九五年度末の改定に続いて再改定し、新たに八九項目を加え、全体で二八二三項目についての規制の見直しに着手する、と発表しました。
保険分野に関連する主要な項目は次の通りです。
九七年六月に報告。
銀行などでの保険商品の販売解禁九七年六月に報告。
生損保本体による相互参入の範囲拡大を検討九七年度。
保険商品の届け出制の範囲の拡大と認可制から原則届け出制への移行を検討九七年度。
火災保険、自動車保険などの料率について損害保険料率算出団体の使用義務を廃止九八年七月までに実施。
消費者から見た保険産業の課題と展望生損保子会社による第三分野への相互参入について現在の激変緩和措置を廃止遅くとも二一年。
これらのうの銀行の保険商品窓口販売に対して、保険業界とりわけ大手生命保険会社が、既存の約四万人の営業職員による営業体制の危機とばかりに大反発をしています。
消費者・保険加入者の立場からすれば、銀行の窓口で保険加入手続きができることになれば、それだけ利便性が増すはずなのですが、どうしたことなのでしょうか。
九二年六月の保険審議会答申「新しい保険事業の在り方」には、次のような指摘があります。
「貯蓄性の高い商品や、健康分野の商品をはじめとして商品が多様化する中で、利用者利便の観点から、商品の特性に応じた販売チャネルを構築することが求められる。
従来のニーズ喚起的な販売チャネルを中心とする保険商品の販売の在り方を見直し、商品の特性に応じた販売チャネルの多様化を進める必要がある」。
もともと生命保険の契約募集のあり方については、義理募集・無理募集、大量導入・大量脱落などの言葉に象徴されるように、少なからざる問題のあることが、指摘され続けてきたところです。
すでに銀行・保険会社を含む各種の金融機関による実質的な管理下に置かれている消費者の立場からすれば、銀行の保険商品窓口販売には何ら不都合はありません。
またすでにイギリスをはじめ、ドイツ、フランスでも、銀行による保険の窓口販売が行われており、アメリカでも一部行われています。
バブル経済の崩壊以後、苦境に立たされている保険業界ですが、それだけに消費者本位の経営のあり方について根本的に見直し、消費者の保険離れを食い止めるための地道な努力が要請されるところです。
経営破綻とその処理をめぐる生命保険業界のもたつきぶりは、いかに保険事業の建前と実態が異なるものであり、いかに保険行政が保険会社よりのものであるかを、消費者・保険契約者に一気に知らしめることになりました。
保険の前提は相互信頼関係です。
保険契約は、当事者である保険契約者と保険者の一方または双方がなすべき給付が、契約成立後の偶然の事情によって確定される射倖契約であり、一般の契約以上に信義誠実の原則が重視されてきました。
ここから保険契約は最大善意の契約であるとされます。
日本の善良な消費者・保険加入者は、保険会社を信じて、長年にわたり保険料を払い続けてきました。
ことに生命保険に関しては、国際的には異常な水準といえるまでの加入ぶりです。
日本から世界有数の保険会社が輩出しているのも、消費者・保険加入者の保険会社に対する盲目的ともいえる信頼があったればこそでした。
経営破綻は一保険会社の問題にとどまるものではありません。
保険事業が信義消費者から見た保険産業の課題と展望誠実の原則に則った保険契約を基盤にして成り立っているとすれば、保険業界全体の信用にかかわる問題です。
ましてや、「共存共栄、相互扶助の精神にもとづく生命保険事業は、国民の福祉と密接に関連し、また、事業の繁栄は、国民の深い理解と信頼の上にはじめて可能である。
保護基金は、保険会社の経営が破綻した場合に、経営危機に陥った保険会社の保険契約の移転や合併などを円滑に行って、保険契約者などの保護と保険事業の信頼性を確保するために、新保険業法に基づいて、各保険会社が、参加して創設された制度です。
保険事業の健全な発展を図るために設立されている事業者団体の生命保険協会と日本損害保険協会が、それぞれ基金として大蔵大臣の指定を受けました。
基金は、主たる業務として救済保険会社に対する資金援助とそのための負担金の収納・管理を,従たる業務として事業参加者に対する資金の貸し付けを行うことができます。
主たる業務としての資金援助には、救済保険会社に対する金銭の贈与、資金の貸し付け、資産の買い取り、債務の保証などが含まれています。
破綻保険会社の保険契約の他の保険会社への全部移転。
破綻保険会社の他の保険会社への吸収合併。
破綻保険会社の子会社化。
制度創設時の一破綻会社についての援助額の上限は、生命保険会,億円、損害保険会億円になっています。
会社の経営基本理念とするならば、破綻処理には、加入者の利益の確保はいうまでもなく、これ以上、消費者の保険に対する信頼を損なうことがないように、保険業界、なかんずく生命保険業界のすべての叡智を傾け、全力を投入すべきでしょう。
もちろん最大の責任があることはいうまでもありません。
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